本日は、以下のような悩みを抱えている方々に向けた記事となっています。
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- 顧客の声をアンケートで収集し、新たなメニューを提供したり価格を下げたりと顧客意見を反映させながら営業を続けても、思ったように売上があがらずお悩み中の店舗オーナー
- 市場マーケティング調査の中でVOC(Voice Of Customer)を分析し商品を企画するも、なかなかヒット商品が生まれず、売上拡大に貢献できてないと感じるビジネスマン
多くの経営者は商品を企画する際に先ずは「顧客視点」を優先にと言いますが、顧客の声を反映させれば必ず売れると信じて疑わない思考は危険なのです。
結論を言います。
売上、利益を上げたいのであれば、勿論、「顧客の声」は大事な要素ですが、先ず最初に考えるべきは「自社らしさ」とは何か?という事です。
自社の強みを徹底的にフォーカスしなければ顧客のニーズをキャッチできても競合にすぐに真似をされ差別化できないのです。
セブンイレブン、マグドナルド、ドトール、スターバックス等々のコーヒー事業を通じた経営戦略理論の著書「戦略は1杯のコーヒーから学べ!」を参考に成功する事業戦略の考え方について数回に渡って解説します。
本日は、世界を代表するファーストフード店「マクドナルド編」です。
なぜ「自社らしさ」を追及すべきなのかが本投稿で分かり易く説明しますので参考にして頂ければ有難いです。
プレミアムローストコーヒー無料キャンペーンは儲かるの?
たまにやっているプレミアムローストコーヒー無料キャンペーン。
景気の善し悪しに関わらず、客にとって無料は嬉しいものですよね。
ただ、店側は 「そんなことして赤字にならないの?」
と疑問がわいてくると思います。
勿論、プレミアムローストコーヒー単品のみであれば大赤字です。
以前、プレミアムローストコーヒーの無料キャンペーンで100万杯を提供の宣伝がありました。
1億円(=100万杯×100円)の売上が消失したことになります。
但し、店舗全体としては、この無料キャンペーンが売上拡大に大きく貢献することになるのです。
無料なのに儲かる2つの理由
その理由を2つ解説します。
1.無料に釣られて集まる顧客の心理
2.「お返しをしなければなんか申し訳ない」という心理(返報性の原理)
上記は何れも人間の心理を利用した最近良く聞く「行動経済学」で説明される理論です。
無料に釣られて集まる顧客心理
「景気が悪く懐がさみしいから外食はやめておこう」という不景気下において外食産業は厳しい状況におかれます。
しかし懐がさびしいからこそ、「無料なら飲む!!!」という人が現れるのは至極当然ですね。
突然ですが
ですよね。
そう、この無料キャンペーンでいとも簡単に客数を増やすことができるのです。
「お返しをしなければなんか申し訳ない」という心理(返報性の原理)
客数は増えましたが、もちろん無料コーヒーだけでは売上はゼロです。
しかし、無料コーヒーに引かれて来店した客の全員が無料コーヒーだけを頼むわけではありません。
無料コーヒーを貰った人の一部は340円の「フィレオフィッシュ」や390円の「ビッグマック」を買うかもしれません。
なぜかというと、人間は何かサービスを受けると「お返しをしなければ申し訳ない」という心理が働くからです。
これを「返報性の原理」といいます。
また、人間は時に理性を失い我慢していた欲求を爆発させることがあります。
無料コーヒーに惹かれて店に入った筈なのに、「たまの外食だから少しは贅沢ても良いかな」という心理が頭を支配するのです。
この心理が返報性の原理に加われば、「あれ?無料コーヒーだけ頂くつもりがビッグマックも買っちゃった・・・」となるわけです。
結果、売上はどうなるか
仮に無料コーヒーに釣られて来店した客の3割が500円程度の商品を購入したとします。
プレミアムローストコーヒーの無料キャンペーンを利用した延べ100万人を対象に考えてみます。
- 無料コーヒー分の損失=100万人×100円=1億円
- ビッグマックの売上=100万人×50%×500円=2.5億円
無料コーヒーの損失を打ち消し、プラスで2.5億円の売上貢献をもたらす事になるのです。
マクドナルドは金のなる木戦略とは
これはマグドナルドの事業ポートフォリオを簡略化した図になります。
縦軸が市場成長率、横軸が市場シェアです。
ビッグマックは成熟市場の中でシェアが圧倒的に高いです。
同店の中では値段も高めに設定されており利益率も高く、儲かる儲け頭です。
但し、成熟市場に位置付けられるビッグマックを陳腐化させず金のなる木として稼ぎ続けるには新商品や安価で高品質のプレミアムローストコーヒーなどで顧客を呼び込む必要があるのです。
プレミアムローストコーヒーですが、豆の品質はブラジルやコロンビアなど4カ国のハイスペックなアラビカ豆だけを厳選して独自にブレンドを重ね、コーヒーマシンも全国のマクドナルド店に設備投資し設置しており、変動費(豆)、固定費(コーヒーマシン)など高いコストが発生しています。
それでも100円で提供できたり、時に無料キャンペーンに打って出たり出来るのは、マクドナルドにとってプレミアムローストコーヒーとは金の木(ビッグマック)を売るための道具だからなのです。
マクドナルドの自社らしさ、強みとは
このような戦略がとれるのもマクドナルドの盤石な基盤(競争優位性)があるからこそなのです。
高品質、低価格を維持できるシステム体系
マクドナルドには優れたシステム体系があります。
例えば、注文後すぐに商品を作りスピーディーに提供される仕組みは、ハンバーガーを作るまでの作業工程の生産性が高くなるような省力化、高効率化の工夫が施されています。
このオペレーションシステムは留まるところなく日々改善され洗練化されていきます。
このようなシステムが成り立つのもマクドナルド独自の人材教育システムで優秀なスタッフ、アルバイト人員がいるからこそなのですが、このようなマクドナルドの競争優位性は、常に改善されていくシステムの秀逸さにあり、競合他社が一長一短に真似できるものではないのです。
まとめ
マクドナルドの経営戦略は如何だったでしょうか?
「自社らしさ」の追求が外食産業のトップを走り続ける力の源泉なのです。
本記事が売上拡大に悩む皆さんの一助になれば幸いです。
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