「邪道」と言われた缶コーヒーが「市民権」を得るまで!UCCの歩み

ビジネス

本日は、以下のような悩みを抱えている方々に向けた記事となっています。

    • 顧客の声をアンケートで収集し、新たなメニューを提供したり価格を下げたりと顧客意見を反映させながら営業を続けても、思ったように売上があがらずお悩み中の店舗オーナー
    • 市場マーケティング調査の中でVOC(Voice Of Customer)を分析し商品を企画するも、なかなかヒット商品が生まれず、売上拡大に貢献できてないと感じるビジネスマン

 

多くの経営者は商品を企画する際に先ずは「顧客視点」を優先にと言いますが、顧客の声を反映させれば必ず売れると信じて疑わない思考は危険なのです。

結論を言います。

売上、利益を上げたいのであれば、勿論、「顧客の声」は大事な要素ですが、先ず最初に考えるべきは「自社らしさ」とは何か?という事です。

自社の強みを徹底的にフォーカスしなければ顧客のニーズをキャッチできても競合にすぐに真似をされ差別化できないのです。

セブンイレブン、マクドナルド、ドトール、スターバックス等々のコーヒー事業を通じた経営戦略理論の著書「戦略は1杯のコーヒーから学べ!」を参考に成功する事業戦略の考え方について数回に渡って解説します。

本日は、日本を代表する大手コーヒー企業「UCC」です。

なぜ「自社らしさ」を追及すべきなのかが本記事で分かり易く説明しますので参考にして頂ければ嬉しく思います。

隠れたニーズは顧客に聞いてもわからない。ではどうすれば?

缶コーヒーは1969年に「UCC上島珈琲」から世界で初めて開発された商品という事を知る人は少ないと思います。

予断ですが、UCCが「ウエシマ・コーヒー・カンパニー」の頭文字という事を知らない人も多いとか。

当時の創業社長「上島忠雄」氏の体験が切っ掛けで、缶コーヒーの開発に至ったという事です。

上島社長はTOP自ら営業に飛び回っており、ある日、駅のホームで列車が出る前にコーヒー牛乳を飲んでいたところ急に発車ベルが鳴り、飲みかけのビンをやむなくホームの売店に返し列車に乗り込んだところから始まります。

当時、コーヒー牛乳はガラスのビンに入っており、飲み終えたビンは店に返却する必要があました。

上島社長は列車の中で

「もったいない事をしたなぁ」

と考え続けてたところ

「コーヒーを缶入りにすれば、いつでもどこでも飲めるのでは」

とふと閃いたそうです。

その経験から「缶コーヒー開発プロジェクト」がスタートしました。

この話を聞くと偶然の経験からたまたま思いついた発想かと思われかも知れませんがそうでは無いのです。

上島社長は常日頃より、誰よりも顧客の立場で考え、顧客に成りきっていた為、駅ホームでの小さな体験を切っ掛けに缶コーヒーの可能性を確信したのだと言います。

しかし、「缶コーヒー開発プロジェクト」は困難を極めました。

”ミルクとコーヒーが分離してしまう/殺菌処理で風味が悪化してしまう/缶の鉄イオンがタンニンと結合し真っ黒に変色してしまう”等々。

失敗の連続でしたが、1年をかけて全ての課題をクリアし1969年4月、ついに世界初の缶コーヒー「UCCコーヒーミルク入り」が世に出たのです。

幾多の困難を乗り越えた原動力は、やはり徹底的に顧客に成りきることと商品にかける情熱なのだと思います。

B to B から B to C へ

さて「どこでも飲める」という隠れた顧客のニーズを見つけ出し果敢に困難に挑戦し、缶コーヒーを世に送り出すことに成功したUCCですが、本当に大変なのはこれからでした。

コーヒー業界は「缶コーヒーなんて邪道である!認めない!」と存在を無視したのです。

また当時UCCのビジネスモデルは今で言うところのB to B(Business to Business)であり、直接的な顧客は喫茶店が中心で、一般消費者への販売方法がわからなかったのです。

そこでUCCは全社をあげて、”キオスク”、”食料品店”など慣れない市場開拓を進めたのですが、なかなか成果に繋がりません。

そんな時、大阪万博を翌年に控えた1969年にチャンスが訪れます。

「万博出展準備室」を設置し、国内外に積極的に事前セールスを展開し、日本パビリオンや飲食店、海外パビリオンにまで納品に漕ぎつけたのです。

大阪万博という外部要因がチャンスである事を敏感に察知し「缶コーヒー」という自社独自の強みを売り込むことに成功しました。

更に、1970年代中頃にホット/コールド兼用の自動販売機を開発し、これが今で言うB to C(Business to Consumer)モデルとなり一般消費者への直接販売のシェアを拡大しライバルへ更に差をつけたのです。

1969年当時、まだ世の中には缶コーヒーの市場はなく、それまでのコーヒー牛乳の顧客は「コーヒースタンドで飲む」ことが当たり前で、それ以上のことを期待する客はいませんでした。

隠れたニーズは顧客に聞いても分かりません。

顧客自身でも気づいていないからです。

VOC取得といって、顧客へのアンケートを取ることは否定しませんが、このようにアンケートでは絶対にわからない事もあるのです。

そこに気づけるのは、日ごろから誰よりも徹底的に顧客になりきる事なのだと思います。

まとめ

UCCの「自社らしさ」の追求はどうだったでしょうか?

当時、「邪道」と言われた缶コーヒーも大阪万博でブレークし「市民権」を得て、それからは競合他社が追いかけるように続々と「缶コーヒー」を開発し、コーヒー業界の「正道」となったのです。

顧客すら思いつかないニーズを発掘することは簡単なことでは無いとは思いますが、常日頃から自らが顧客に成りきって高いアンテナを張り巡らすという姿勢は見習いたいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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