本日は、以下のような悩みを抱えている方々に解決のヒントになればと思い書いた記事です。
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- 顧客の声をアンケートで収集し、新たなメニューを提供したり価格を下げたりと顧客意見を反映させながら営業を続けても、思ったように売上があがらずお悩み中の店舗オーナー
- 市場マーケティング調査の中でVOC(Voice Of Customer)を分析し商品を企画するも、なかなかヒット商品が生まれず、売上拡大に貢献できてないと感じるビジネスマン
多くの経営者は商品を企画する際に先ずは「顧客視点」を優先にと言いますが、顧客の声を反映させれば必ず売れると信じて疑わない思考は危険なのです。
結論を言います。
売上、利益を上げたいのであれば、勿論、「顧客の声」は大事な要素ですが、先ず最初に考えるべきは「自社らしさ」とは何か?という事です。
自社の強みを徹底的にフォーカスしなければ顧客のニーズをキャッチできても競合にすぐに真似をされ差別化できないのです。
セブンイレブン、マクドナルド、ドトール、スターバックス等々のコーヒー事業を通じた経営戦略理論の著書「戦略は1杯のコーヒーから学べ!」を参考に成功する事業戦略の考え方について数回に渡って解説します。
本日は、世界の「スターバックスコーヒージャパン」です。
なぜ「自社らしさ」を追及すべきなのかが本記事で分かり易く説明しますので参考にして頂ければ嬉しく思います。
自分らしさを失ったスターバックスコーヒー
1971年の創業以来飛ぶ鳥を落とす勢いで成長が続いてきたスタバも突然、利益が大きく減少した時期がありました。
下表が2007年から2008年にかけての経営数値ですが売上は10%以上伸びているものの利益が半分以下に減っている事がわかると思います。
経営危機に陥った頃のスタバ業績
これを見て何が原因かお分かりになるでしょうか?
売上は増えているのに利益が減っているなぁ。
そうです。
「コストが増加」しているのです。
では、どうすれば良いですか?
効率化、材料費、人件費削減などでコストを減らしたら良いのでは?
うーん、残念ながらそうでは無いのです。
通常、このように高コスト体質になった場合はコスト改善に舵を切る事が常套手段ではありますが、それは現場を知らない経営者の安直な発想なのです。
経営難に陥った2008年にスタバのCEOに復活したハワード・シュルツは安直な発想ではなく、「スタバらしさ」を失った事が業績低迷の主因と考えたのです。
要因は以下の3つです。
- 効率化のため、挽いたコーヒー豆を店に届けて保管する方式に変更し、その結果、店で豆を挽いた際の重厚で豊かなコーヒーの香りが店から消失した。
- 売上拡大のため、チーズサンドイッチを売り出したが、温めた時に店中に充満するチーズの香りでコーヒーの香りを打ち消してしまった。
- 人件費削減のため、教育費をケチり研修不十分なバリスタがコーヒーを淹れるようになって明らかに味が落ちた。
つまり、成長、効率性、コストを追求するあまり、「スタバらしさ」という自社の強みを見失っていたのです。
これは、ハワード・シュルツ現場へ足を運んでいたからこそ気付いた問題であり、経営数字を眺めるだけでは決して分からない事なのです。
スタバ復活への道は原点回帰
一番のスタバの魅力と言えば、家でも職場でもない「第三の場所(サードプレイス)」とい価値を提供できる強みだと言えます。
「第三の場所(サードプレイス)」という言葉は、社会学者レイ・オールデンバーグの著書「素敵な心地よい場所」で用いられていた学術用語ですが、ハワード・シュルツが気に入り、スターバックスを「第三の場所(サードプレイス)」と名付けたとの事です。
この場所では、家庭や職場と違う現実から距離をおける非日常的且つ優雅な空間を与えてくれるものであり、だからこそ少しの妥協も許されないのです。
チーズの濃い香りが充満し、コーヒーの香りを失い、素人同然のバリスタが淹れたコーヒーを飲む場所は、もはや「第三の場所(サードプレイス)」では無くなっていました。
「スタバらしさ」を失ったため顧客が去り業績が低迷したというのがシュルツの出した答えでした。
答えが見つかれば後は簡単で以下の施策を矢継ぎ早に行いました。
- 店舗でコーヒー豆を挽く方式へ戻した
- 匂いのきついサンドイッチの販売を中止した
- 全米7100店舗を半日閉店しバリスタの再研修を実施
要するに成長、効率化のために良かれと思って導入した経営方針を間違いと認め全て排除したのです。
その他にも最新鋭のコーヒーマシンの製造メーカーを買収したり、付加価値向上のための投資を推し進めました。
こうやって、原点回帰で「自社らしさ」を追求し見事にV字回復を成し遂げたのです。
まとめ
スターバックスの業績低迷からの再生は如何だったでしょうか?
あなたの会社もコスト第一主義に走り、ガリガリにやせ細り、「自分らしさ」を見失っていないでしょうか?
成長し続ける為には、経営の合理化だけでなく、現場レベルを知って「自社らしさ」を徹底的に追求する必要があるのです。
この記事が業績低迷に悩む経営者や自営業者の方々のヒントになれば嬉しく思います。
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