昨今、日本でも長期雇用傾向は変わり、職を変えることが当たり前な時代になったと言われています。
ただ転職というのは心労的、体力的にも苦労するもので、勇気を持って一歩踏み出し、転職したはいいが、「給料が減った」、「なんだか社風が合わない」、「仕事内容が思ってたのと違う」等々で思い描いた通りのシナリオに進めなかったなんてことも多いのが実情です。
そこで今回、転職が失敗する理由と転職を成功させる方法について解説します。
タイトルに(第一回)と書かれています通り、「転職が失敗する理由と転職を成功させる方法」はシリーズで記事を書いていきたいと思います。
この記事では転職を考えているけど
・転職先でやっていけるか不安
・収入が下がらないだろうか?
・そもそも転職すべきなのかな?
という不安を抱え決断を迷っている人のために
失敗しない転職のために知っておくべき事を2021年4月新版 立教大学経営学部教授 中原淳氏の著書「経営学」 をベースに国家資格キャリアコンサルタント有資格者ロイが自身の経験を踏まえ丁寧に解説します。
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ここで結論をお伝えしますと
♦失敗する理由
マッチング思考の落とし穴、ラーニング思考への転換を
お察しの通り、「マッチング思考」で転職を考える行動は失敗しない転職の答えではありません。
世の中に出版されている「転職本」のほとんどは、
「もっと自分に合った職業があるはず」
という「マッチング思考」が前提に書かれています。
実は、ここには落とし穴があり、自分や転職先は「変わるもの」という概念が抜け落ちており「マッチング思考」での転職には限界があるのです。
では、この限界についても詳しく紐解いていきます。
「マッチング思考」による転職活動とは、自分に合った会社、職種を探す転職活動です。
学術的にも「構造的アプローチ」で知られるパーソンズの三段階プロセス、ウィリアムソンの特性因子論などが古くから伝わる職業選択の理論になります。
この偉い先生達の理論や「マッチング思考」を全面的に否定するわけではありませんが、この思考だけに頼るのは以下のような要因で危険なのです。
② だから自分自身の思想、行動が変わらないとは言えない
③ 企業も業態を変化する時代
④ 持っているスキルはすでに過去のもの
⑤ 検討対象の求人が限定的になる
①(自分が知っている自分は全体のごく一部分である)について、私たちは自分のことを哲学者のように「我は何?」などと思いながら、常日頃から深く自分を見つめて生きているわけではありません。
自身の性格、興味、関心について、自分が思っている自分は「これだ!」と自信をもって言い切れる人は少ないはずです。
そのうえで分析できた自分自身は②(だから自分自身の思想、行動が変わらないとは言えない)の通り、これからも変わらないとは絶対に言えないのです。
転職活動をしながら、自分に合っていると感じる企業を探すことは出来ますが、③(企業も業態を変化する時代)で指摘の通り、その企業が変わらいない事を保証することは出来ません。
という事を踏まえ、転職プロセスにおいては、「自分を意識的に変えること」が必要不可欠な要素なのです。
この「自分を意識的に変えること」が「学び直し」であり、「ラーニング思考」と呼んでいます。
時代の変化にアンテナを立て敏感に察知し、変化に適応して「自らを変えていくこと」が、そこには含まれます。
転職という行動に移すメカニズム(転職の方程式)
◊転職の方程式
D × E > R
不満 転職力 抵抗感
これが転職の方程式ということで、「転職学」で説明されている最も重要なポイントとなります。
人がどのような状況下で離職、転職を考えるのかということです。
D)Dissatisfaction(不満)
仕事内容、職場人間関係などの不満の強さを表します。
当然この不満が大きくなればなるほど転職したい気持ちが高まります。
E) Employability(転職力)
キャリア業界で最近よく耳にする「エンプロイアビリティ」は「雇用される力、適応する能力」です。
これが高いほど、現在と違う会社、仕事に移ることが出来る可能性が高いという事になります。
R)Resistance(抵抗)
転職を検討するにあたっての抵抗感です。
環境を変えることに対するストレスや不安などの度合いで、この「抵抗感」を「D×E」が上回ったとき人は転職を決意し行動に移すのです。
方程式から導出される失敗しない転職の仕方
前述、D/E/Rのうち、まずは心理的な側面が強いDとRについて深堀していきましょう。
日本では不満ベースの転職が全体の8割を占める
♦日本における転職の動機は「不満」ベース
上のグラフは「転職学」に示された日本人の転職した理由の引用ですが、30.9%が「前職への不満のみ」で48.9%が「前職への不満あり転職先への魅力あり」と不満ベースの転職が全体の79.8%を占めています。
その理由については、日本人は終身雇用を前提とした雇用形態であり「就職」というよりも「就社」のイメージが強く、自らが主体的にキャリア設計し行動に移すことが希薄なことにあります。
終身雇用前提のため職場に不満があっても我慢し、キャリアを自ら選択する意識が希薄なため、不満が増幅され、「不満」ベースが転職の動機になっているのです。
♦問題は「不満の内容」ではなく「不満の変わらなさ」
また、それらは「給料が安い」、「仕事に飽きた」、「パワハラを受けている」など不満の内容自体よりもその不満の変わらなさが転職を決める支配的な要因なのです。
つまりパワハラ上司がいたとしても、そいつが異動でいなくなることを知っていれば何れ不満は解消されるので離職を考える動機から除外されます。
例えば、子育てと仕事の両立が難しい状況におかれている場合、社内の先輩に同じような境遇だけども上手く両立できているロールモデルがいないか調べてみましょう。
もしロールモデルがいるのであれば離職を決断する前に、その先輩に話を聞き、行動を真似することにより解決できるかも知れません。
勿論、求職活動の中で、子育て支援に理解ある会社が見つかるかも知れませんが、先ずは現在の会社の中で解決策が無いか検討することが第一優先です。
このあたりは、専門家の「キャリアコンサルタント」へ相談すれば、適格なアドバイスがもらえるはずですので是非活用してみて下さい。
転職に抵抗感を感じる理由
転職に感じる抵抗感とは「今の環境から変わることの怖さや不安」のことです。
これは、多くの人は変化を好まないという「恒常性」という性質を持っているためですが、もう少し深堀すると3つの理由に分けることが出来ます。
①社会的な理由(日本の雇用形態が生んだ転職イメージ)
1つ目は社会的な理由で、日本人は長き間終身雇用制度という雇用形態であったため、転職に対しネガティブな印象が根強く残っており、転職者に対し「何かトラブルがあったのでは?」という視線で見られることが多々あるためです。
②心理的な側面
2つ目は行動経済学でも知られる「現状維持バイアス」です。
現状維持バイアス(status quo bias)とは、変化や未知のものを避けて現状維持を望む心理作用のことで、現状から未経験のものへの変化を「安定の損失」と認識し、現在の状況に固執してしまうというものです。
提示された変化にメリットとデメリットがある際、現状得られている利益よりも変化による損失から得る苦痛の方が大きいと判断し、非合理的な選択をする傾向があります。
プロスペクト理論では新たに200ドルをもらえるチャンスよりも今ある100ドルを失うロスの方に関心が大きくなり合理的な判断ができなくなるのは、「損失回避性」が働きかけているからとされています。
③人の属性に帰属
●年齢が上昇するにつれ抵抗感が増す
若いうちは環境の変化に柔軟に対応できるが、年をとると安定志向に走る傾向がある
●男は地位の安定を求める
転職直後に役職があがることは稀なため抵抗感を感じる
●男は女に家庭を優先してほしいと思っている
仕事にやりがいを求めて転職したがる妻の転職には反対(夫ブロック)
●女は男にはなるべく転職して欲しくないと思っている
家族、子供の存在あり安定した収入を求めるため夫の転職には反対(嫁ブロック)
この男女の考えも昔ながらの悪き慣習「男は仕事、女は家庭」の固定概念によるものが多分にあると思います。
お互いの意見を尊重せずに勝手に行動した結末で家庭、仕事ともに崩壊するなんて話、たまに聞きますよね。
「抵抗感」について、①社会的な理由、②心理的な側面 は自助努力では変えることが難しいものですが、③人の属性に帰属する問題はどうでしょうか?
例えば、夫婦でよく話し合いお互いの感情を理解することで「抵抗感」が弱くなることもあるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、転職が失敗する理由と転職を成功させる方法の概要を解説しました。
♦失敗する理由
転職が頭をよぎったとき、先ずは上記の方法があるということを思い出してください。
また、国家資格キャリアコンサルタントへ相談頂ければ、今回説明した内容を更に深堀りしケースにあわせ具現化したアドバイスを受けることが出来ますので活用ください。
また期間限定で、国家資格キャリアコンサルタントの私、ロイがオンラインでの無料相談を承りますので希望される方はコメントの方、よろしくお願いいたします。
次回は、「自分が場に適応するための準備方法」、「ラーニング思考への転換方法」の理解を深めるため、今回紹介した転職の方程式の中で「E(転職力)」の具体的な高め方について詳しく説明していきます。
本シリーズが転職で悩む人の力添えになれば幸いに存じます。
以上
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